出版物紹介

句集『澪杭のごとく』 幹 自聲

2023-03-03

句集『澪杭(みおぐい)のごとく』 幹 自聲(かん・じせい)

発行:令和5年2月14日

発行所:株式会社 文學の森

自選15句

底なしにあをき空あり風花す

朱鷺の首雪降るたびに黒くなり

束風や上路の山の潮まみれ

堅雪を朱に芽鱗のおびただし

水鳥の鋭きこゑを地震の刻

熱燗や廃炉作業に出稼ぎと

除染済確認せんと巣箱掛く

朧夜や狂はぬやうに水を呑む

親不知海より揚がる蟬のこゑ

慰めん夏野へ墜ちし魂ふたつ

蔓荊の香に清貧の月日かな

黄落や死ぬるまで今日積み重ね

鉛筆に詩嚢宿るや霜の夜

灯りて澪杭のごと枯野宿

気嵐の黄金色や立山より暾

 

句集『柔らかなうちに』山崎妙子

2022-10-28

句集『柔らかなうちに』山崎妙子

岳書館

2022年9月20日発行

 

自選10句

柔らかなうちに子の来よ切山椒

恋ひ焦がるるものを持てとや春の山

卒業子薔薇一本を波に置き

打たれるるに非(あら)ねど痛し那智の滝

泉呑むときペンダント胸離れ

芥子の花けふもどこかに人柱

森番の木肌撫でゆく晩夏かな

人ばかり見し半生よ牧は秋

兵となる子らかも知れず甘藷掘る

冬紅葉痛みなき日の吾は王妃

句集『湊』清水美智子

2022-10-04

 

句集『湊』清水美智子

東京四季出版

2022年7月28日発行

 

宮坂静生選 12句

雪沓の音きしきしととほき日へ

シャンソンや夜叉五倍子緑惜しまざる

ファド聴く今宵リスボンは夏の果

闘牛の咆哮四方の魂しづめ

熊の胆は札代りとよ出熊猟

桜かくし沖に明るさありにけり

雪晴の怒濤南蛮えびまつ赤

木の根明く妖精の杖触るるたび

下駄つくりし父の生業けらつつき

糶なき日浮子のゆるるやあいの風

赤松のどこか人めく晩夏かな

稲滓火匂ふ父母の匂ひとも

 

句集『桐一葉』渥美人和子

2022-10-04

句集『桐一葉』

渥美人和子

岳書館

2022年7月20日発行

 

煤逃げの男ばかりの映画館

玉葱の皮の軽さよアッパッパ

日本橋ふり出しにして納涼船

大川に往き交ふ船や三社祭(さんじやさま)

玉章や子規の使ひし手水鉢

とある夜の霧に消えゆくジャンギャバン

羽抜鳥声にならざる声絞る

来し方といふには険し忍冬

九十歳の春を諾ひ九十九まで

しばらくは己が温みのコート吊る

(抄出 小林貴子)

 

Copyright© 岳俳句会 All Rights Reserved.