出版物紹介

句集『芋の葉』安田三千代

2025-11-01

『芋の葉』 安田三千代

岳書館

令和7年9月20日発行

 

『芋の葉』十句

芋の葉のいと静かなり揺れしあと

揺れてゐる里芋の葉よ合唱団

実ばかりの芙蓉となつてしまひけり

グラジオラス向きたき方へ向きにけり

宇宙人のやうなたんぽぽ絮毛かな

焼餅は夫にまかす雑煮かな

討入日夫に難くせ付けて見る

西瓜切る夫の顔の真面目さよ

冬日浴び灯台のやう百合の殻

見つめ合ふ二つの瓶の闘魚かな

 

句集『天の蛇』

2025-11-01

『天の蛇(ていんのばう)』安田久太朗(やすだ・きゅうたろう)

岳書館

令和7年9月20日発行

 

『天の蛇』十句

船酔のままに八月踊りかな

復帰の日石敢當(いしがんとう)に会ひに行く

魂石を握り沖縄復帰の日

黒糖煮る一番鍋は仏壇へ

大胡麻斑蝶(おおごままだら)吾にも羽のありし頃

初恋に色あらば露草の青

クリスマスリースを妻に編みにけり

雪解星かかる阿多多羅(あたたら)我が生地

妻と居る処が故郷紅椿

 

 

 

句集 『狼が啼いた夜』 田村道子

2025-07-01

『狼が啼いた夜(よ)』 田中道子

2025年4月24日発行

砂子屋書房

 

田村道子のデビューは衝撃的だった。大らかな土の匂いが立つ言葉で読み手の言葉の貯蔵庫を叩いたばかりではない。読み手は心が揺すられた。  (宮坂静生「序文」より)

俳句エッセイ集 『俳句譚』 浜智子

2025-07-01

『俳句譚』 浜 智子

ながの自分史コアセンター

2025年4月発行

 

香月泰男と同郷、三隅が故郷の智子さん。本年四月、七十歳を記念にエッセイ集『俳句譚』を出された。慎ましく勁い。〈我のみの小さき一日山桜 智子〉の山桜のように。
宮坂静生

句集『硝子の時間』篠遠良子

2025-03-01

句集『硝子の時間』篠遠良子

本阿弥書店 2025年1月20日発行

 

自選12句

春の吾子銀の折鶴持ち歩く

骨壺に入る春色の喉仏

水笛の鳥にみづ差す夜店守

恋心ぐらぐら田水沸きにけり

真夜中は硝子の時間水中花

桜蘂降るや逝く人耳聡き

素手といふ纏はざるもの手毬つく

毛氈に鳥影走る立子の忌

滴りの途絶えて数へきれざる死

遠青嶺脚立自在にカメラマン

草刈や掌といふ固きもの

木曽馬も男も枯れてゆく中に

 

句集『八ヶ岳真白』伊藤美恵

2025-03-01

句集『八ヶ岳真白(やつましろ)』伊藤美恵

朔出版 2024年12月25日発行

 

宮坂静生選 12句

夏の靄橅に抱擁さるる心地

杜鵑草(ほととぎす)苦にもされずにありたきよ

夫褒むること忘れてゐて草紅葉

角ばりし心いつしかポポーの実

慕情とは秋の帚木ふんはりと

天に鳶縄文の地の草蝨

揺るがざる極月の八ヶ岳我は微塵

大満月森の獣等眼をよせ来

餅切るや子は大人びてもの足らず

冴返る阿弥陀岳(あみだ)の天の深きかな

この鄙の土となる身や法師蟬

まなかひに八ヶ岳真白なり山の講

句集『裸足の家』市川敬子

2025-03-01

句集『裸足の家』市川敬子

文學の森 令和6年8月8日発行

 

宮坂静生選10句

刺草の道行けばふと少女の時

滴りの音の充ちたる生家なり

やはらかき泉の底の睡魔かな

螻蛄は背に天使の羽根を着けてをり

春星座からだ半分遊牧民

鳳仙花音が仕事のブリキ職

気分屋で通す一生薔薇の国

空のびてつんつるてんや小鳥来る

山繭の羽化やともかく今日を生き

毛蚕さまの頭でつかちだいだらぼう

 

句集『子らの宵ぼれ』丸山宏子

2024-12-01

『子らの宵ぼれ』 丸山宏子

岳書館 令和6年10月20日発行

 

小林貴子選 15句

狂言のごわすごわすと山の藤

夏雲や浮桟橋の進みさう

ピザ店の幌の張り出し冬木立

面輪板家族の多き家に嫁し

河骨やぱさぱさぱさと俄雨

面打ちの一打に春の動きけり

蟬の羽化子らの宵ぼれ許されよ

青葉騒リーチの皿の兎どち

噴水の高きに我の揺れてをり

寒月やふつと癋見の戯け顔

月白や辻に少年占師

鳴き出す蟬に覚悟のやうなもの

振り向かず真つ直ぐに行け梅真白

流れ行く雲に手を挙ぐ捨案山子

こんこんと湧く水手斧始かな

 

『鑑真』宮坂静生

2024-09-01

句集『鑑真』宮坂静生

出版社 本阿弥書店

発行日 2024年8月5日

 

自選 十五句

鑑真も空海もゐる月の中

帰らざる日よ寝室に登山杖

蜃楼(かいやぐら)わが青春の大江ゐる

八十年は道草といふ薄暑

霓(にじ)といふ兜太が贈りくるるもの

クリムトもシーレも世紀末の汗疹(あせも)

鉄材を擲(なげう)つパール・ハーバー忌

地下壕の滴り闇を穿ち抜き

広島へ行く一輛はみんな螽蟖(ぎす)

黄落や自死の三島が通せんぼ

栗は踊子タイツのごとき網袋

コロナウイルス蓑虫の春装で

傘寿とて緑陰力の身につきし

兜太嵐龍太花冷え杏子の死

戦争が立たぬ縁側ぬくとしよ

『俳句表現 作者と風土・地貌を楽しむ』宮坂静生

2024-06-06

 

『俳句表現 作者と風土・地貌を楽しむ』宮坂静生

出版社 平凡社
発売日 ‏ ‎ 2024/5/27

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